広島高等裁判所岡山支部 昭和47年(ラ)16号 決定
抗告人 渡辺美代子
主文
本件抗告を棄却する。
抗告費用は抗告人の負担とする。
理由
一、抗告人の抗告の趣旨および理由
別紙記載のとおりである。
二、当裁判所の判断
競売期日の公告に賃貸借関係を掲記する趣旨は、競落人をしてあらかじめその承継しなければならない賃貸借を知ることによって不測の損害を防止させるためであるから、競落人に対抗できない賃貸借の如きはこれを公告に掲げることを要しないものと解するのが相当である。
記録によれば、本件競売の基礎である債権者岡山県商工信用組合の第一順位の根抵当権は昭和四二年八月二日に設定登記されたものであるところ、抗告人主張の賃貸借はその後の同年九月一日に成立し、しかも三年を超える長期の建物賃貸借である、というのであるから、該賃貸借は右抵当権者、したがってその抵当権実行による競落人に対抗できないものであることが明らかである。
そうすると、本件競売期日の公告に抗告人主張の賃貸借を掲記しなかったとしても、この点に違法はない。
その他、記録を調査しても原決定を取消すべき瑕疵は見当らないから、本件抗告を棄却すべく、民訴法八九条を適用して主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 辻川利正 裁判官 永岡正毅 熊谷絢子)
〈以下省略〉